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January 26, 2005

プラネテス終了

NHK教育で放送していたアニメ「プラネテス」が最終回を迎えた。舞台は2075年、数十万の人間が月面都市や宇宙ステーションで暮らし、火星への有人飛行も成功し、今再び木星への有人飛行計画が実現しようとしている時代。そんな時代の宇宙のゴミ「スペースデブリ」の回収屋の話である。

このアニメはfunnyという意味でおもしろかったのはもちろん、いろいろと考えさせられたという点でinterestingでもあった。以下、ネタバレなど全く恐れずに感想。

最初の頃はなんとなく宇宙モノということで、普段電脳世界に籠もりがちな自分にとって宇宙ステーションでの日常を描いたストーリーが新鮮で見始めたのだった。

このアニメのおもしろさは3つの点にあると思う。

1つは設定のリアルさである。宇宙開発が今より進んでいるとはいえ、スペースコロニーができているわけではなく、ほとんどの人間は地球に暮らし、宇宙にいるのは基本的に宇宙関係の仕事に就いている人か観光客である。月面開発が進んだのも月でヘリウム3が発見されたからで、月から本当にヘリウムが出るかどうかはともかく、開発が進んだ理由付けとして説得力がある。またこの時代になると宇宙開発は国家主導から民間の大手企業主導へと移り変わっているが、例えばスペースデブリを回収すると「連合」(国連だろうか)から補助金がつくといったあたりのシステムが現代社会と妙に似ていてニヤっとさせられる。テレビ電話はあたりまえとなっているが、みんな普通にノーパソを使っていて、脳が電脳化されていたりなんてことはない。寝るときは布団を敷くしごちそうは豚カツだ。このあたりの「あまり未来っぽくない」設定が好きだ。さすがにこれからの70年という時間を考えるとプラネテスの設定は少々禁欲的すぎる気もするが。

2つめはキャラクターの魅力。特徴ある人物がたくさん出てきて飽きさせない。最初は「タナベかわいいよタナベ」といって萌えていたのだが、最後まで見た今一番気に入ったキャラは?と聞かれればロックスミス博士と答えるだろう。彼は木星往還船フォン・ブラウン号を開発した人物なのだが、発言と行動がものすごい。「私が宇宙船以外何一つ愛せない逸材だからさ」と言い切ったり、実験中の核融合エンジンが吹き飛んで研究施設と数百名の研究員が一瞬で蒸発しても「爆発した2号エンジンが残したデータには満足しています」とか、船がテロリストに襲われた時には自分だけ脱出する準備をして「私さえ生き残ればフォン・ブラウン号はまた作れるよ」と言ったりととんでもない人物である。
そんな彼の言動を格好イイと思ってしまう俺は技術バカってことなんだろうか。多分、そんな傍若無人な振る舞いも許されるほどの技術力に憧れているのだろう。フォン・ブラウン号が木星に出発するころには次の土星計画のことを考え始めていたりするあたり、本当にすごい。

3つ目は人類が抱える問題をきっちりと描いていること。豊かな先進国と貧しい発展途上国という区分はこの時代になっても消えていない。人類は宇宙時代を謳歌しているように見えるが、その恩恵にあずかっているのは一部の先進国だけ。アフリカや中南米の発展途上国は未だに内戦、飢餓、疫病、貧困といった泥沼から抜け出せないでいる。地上では毎年何千万人もの人々が餓死していくというのに、数名の宇宙飛行士を木星に送り込むために莫大な費用を投じることが果たして許されるのか。木星計画は劇中、反対運動と共に描かれる。そして先進国(=「連合」)主導の宇宙開発を実力で阻止しようとするテロリスト、「宇宙防衛戦線」。

現在の宇宙飛行士達は皆口を揃えて、宇宙から見た地球の美しさに感動した、人類は一つであることを実感したと言う。しかしながら、宇宙へ出ることがあたりまえになると、そうした感動も薄れ、宇宙も結局は国家間の権益争いの場と化してしまうのだろうか。残念なことではあるが、それが人間という生き物の性なのかもしれない。

「遠くへ行くことが、先に進むことだけが人類の道ではない!」というテロリストの言葉に対して、この作品は答えてはいない。結局テロリスト達の破壊工作は失敗に終わり(結局は宇宙防衛戦線のトップもどこぞの国家の利益を代表する者に過ぎなかった)、主人公はヒロインと結婚し、木星へと出発するところで話は終わる。

これはこれで感動のエンドで、見終わったときの爽やかなのどごしというか、後味がとてもよいので気に入っているのだが、劇中で提起された課題については視聴者、そして人類一人一人への課題とするということか。

スマトラ沖の地震、そして津波のニュースを見るたびに思うことがある。誤解を恐れずに書けば、「彼らは報道されるだけ幸せである」。どの程度行き渡っているのかは別問題として、全世界から競って援助の手がさしのべられているし、そこで起きた悲劇を全世界の人が毎日テレビや新聞で見聞きしている。しかし、インド洋沿岸諸国に各国の支援と同情が集中する中、他の地域では餓死したり、地雷を踏んだり、病死したり、体制によって消されたりして死んでいく人も大勢いることだろう。彼らの死はどのニュース局も報道しない。スマトラ沖津波被災者への支援はもちろん必要なことだが、同時に世界には報道すらされない悲劇が腐るほどあることを忘れることがあってはならないと思う。


さて、以上は全てアニメ版を見ての感想である。これまで漫画はなんとなく絵柄が好きになれなくて手を出してなかったのだが、それほど冊数多くないみたいだし、買っちゃうかな。アニメとはまた大分話が違うようだし。

最後に、よくまとまっているレビューサイト見つけたのでメモ

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Comments

漫画版は
・絵柄は結構変わる
・タナベがほぼ別人
・ストーリーがかなり違う
あたりを注意汁
漫画版もイイヨー
 
そしてなんとなくアニメ→漫画の方が楽しめた希ガス
ギャップに耐えられればだけど

Posted by: mouse | January 27, 2005 12:54 PM

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